【読書】『売上を、減らそう』【ビジネスモデルで幸せを作る】

読書読書,売上を減らそう,中村朱美

売上 = 単価 × 数量
という掛け算にすると単純なのですが。
 ビジネスで単価を上げるには?
 ぼったくるなどという悪いことはできない(やってはいけない)。
 有名人でも、インフルエンサーでもない、ごくごく平凡な人間が、付加価値をつけるにも、限界がある。
 数量を上げようとしても、働く時間が延びるだけ。1日24時間しかないし、体力だって限界がある。
 だからと言って、滅びるわけにはいかない―――――
―――――ということで、売上をつくらないで、利益を上げる方法を編み出した先輩がいた。
 そして、僕はパックった。
 結果、うまくいった。

 そんな経験があったので、
『売上を、減らそう』
というタイトルに食指が動いたのです。
 その先輩と、僕は、単なる技術でしかなかったけど、中村朱美さんは、ビジネスモデルとして結果を出した。

 できるだけ多くの人が「穏やかな成功」をつかめるように。
 「やさしさ」と「たくましさ」がたっぷり詰まったこちらの本をどうぞ。

ポイント

  • みんなが売上を追いかけてうまくいっていないのなら、もうそれを追いかける必要なんてない。
  • 「従業員が働きやすい会社」と「会社として成り立つ経営」を両立させる。
  • 自分のやるべきことを絞る、自分の人生に合わせた売上を稼ぐ、というキーワードは、「働き方」そのもの。
  • 「穏やかな成功」を目指そう。

100食しか売らない

みんなが売上を追いかけてうまくいっていないのなら、もうそれを追いかける必要なんてない。

 そもそもの疑問はこれだ。
 『「超」入門 失敗の本質』では、
・「目標達成につながらない勝利」はいらない
・戦略とは、正しい指標を設定すること
を指摘しています。

 なぜ売上を上げなければいけないのか?
 ゼロでいいなんてことはないのだが、今までの日本が売上を伸ばして、事業規模を拡大するビジネスモデルで成功してきたことは事実だ。
 しかし、少子高齢化による人口減少は、
・お客様が減ること
・従業員も減ること
が予測される。
 売上を上げて、事業規模を拡大するビジネスモデルは、もう通用しないのではないか?
 だったら、
「売上を、減らそう」
 その結果、
 従業員が売上から解き放たれたことで、佰食屋には、従業員発信のさまざまな改善が生まれました。そして、そのアイデアは、「売上を上げること」よりはるかに高次元の「お客様の満足度」を引き上げるアイデアでした。
 もし、どこかのお店に行って、「サービスが悪いなぁ」と思ったら、もしかしたら、忙しくててんてこまいなビジネスモデルだからなのかもしれない―――――
 この雰囲気がお客様にも伝わったのか、とあるウェブサイトに嬉しい書き込みがありました。
「お客様も多くて忙しそうだけど、みんなイライラしたり、バタバタしたりしているわけじゃない。テキパキとしていて、まるでサッカーをしているような連携があって、それぞれ楽しそうにパスを回しているみたい」。
 こんなお店をつくる。
 経営者としてできるのは中村さんの強いところだが、そんなお店だったら、働いてみたいし、食べに行ってみたい。

従業員を大切にする

自分がやりたくないことをなんで人にやらせようとするん?

 なぜ佰食屋が、そこまで従業員を大切にするのか。
 それは、自分が従業員だったとき、経営者にそう考えてほしかったからです。
 その通り。
 人間関係の基礎中の基礎である。
 パワハラ、モラハラ、カスハラなんて新語まで生まれたけれど、そんなことの被害者になりたくはない。
 だったら、自分はやらないようにしよう。
 本当に、基礎中の基礎だ。

 加えて、過労による体調不良やメンタルヘルスの問題もある。
 その結果、休職や退職という結果につながったら、従業員も不幸だが、会社も不幸だ。
 それだったら、従業員を大切にしよう。
 そうして働き続けてくれれば、従業員も幸せだから働き続ける。
 辞める人、休む人がいないのなら、従業員を募集する必要もないから、求人に費用がかからない。

 かくして、佰食屋の課題は
「従業員が働きやすい会社」

「会社として成り立つ経営」
を両立させることになるのです。

 自分が嫌なことは従業員にもさせたくない、自分が働きたい会社にしたい、「頑張れ」なんて言いたくない、仕組みで人を幸せにしたい……必死で考えて、少しずつ出来上がってきたのが、現在の佰食屋です。
 これを「たくましさ」と言わずに何と言おう。
 従業員を大切にするのが「やさしさ」なら、
 仕組みとして作り出したのは「たくましさ」だ。
 僕が、中村さんのことを「やさしく」て「たくましい」と思うのは、これが理由だ。

じゃあ、具体的に、どんなメリットがあるの?

メリット1「早く帰れる」退勤時間は夕方17時台
メリット2「フードロスほぼゼロ化」で経費削減
メリット3「経営が究極に簡単になる」カギは圧倒的な商品力
メリット4「どんな人も即戦力になる」やる気に溢れている人なんていらない
メリット5「売上至上主義からの解放」よりやさしい働き方へ

 これを一言でまとめると、
「サービスを極限まで絞ることで売上を上げているお店」
です。
 このビジネスモデルは、
「100食限定」つまり、自分のやるべきことを絞る、自分の人生に合わせた売上を稼ぐ、というキーワードは、誰しもに関係ある「働き方」そのものだからです。
になる。
 あなたは何のために働いていますか―――――と、上から目線でものをいうわけではない。
 タワマンに住んで、住宅ローンを払うためだろうか?
 高級車を乗り回して、ローンを払うためであろうか?
 僕はどちらにも興味がないし、それに年収90万でハッピーライフを送っている人もいる。

 身の程をわきまえたら、今の収入は本当に必要だろうか?
 今の収入のために働いて、心に変調をきたすなら―――――
 これは個人の価値観の問題だから、他人がとやかく言うものではないけれど、そういう考え方もある。
 それをビジネスモデルにしたのが中村さんです。

 そして、さまざまな災害を経た結果、
「佰食屋1/2」
というモデルまで編み出しました。

 もし、夫婦で一緒にお店をやることにしたら? 
 一緒に朝ごはんを食べて、子どもがいれば保育園に送り迎えして、朝の10時から夕方16時まで働く。定休日も自分たちで決めて、子どもと一緒に出かけることもできる。
 世帯月収は50万円。そんな働き方が実現します。
 わたしはこの「働き方のフランチャイズ」を、全国に広げていきたい──。
 わたしたちがやりたいのは、単にいち事業として佰食屋1/2を成り立たせることではなく、全国各地に幸せな家族を増やしていくこと、幸せだと感じられる時間と心の余裕を持った人を増やしていくこと。
 こんなことができるのなら、果たして本当に売上を上げることが必要だったのだろうか?
 誰しも、自分の幸せのために生きている。
 そして、それにあわせた収入を得る。

 売上が、ゼロだったら困るんだけど、自分の幸せにみあった売上を目指そう。
 そして、「穏やかな成功」を手に入れよう。

まとめ

  • みんなが売上を追いかけてうまくいっていないのなら、もうそれを追いかける必要なんてない。
  • 「従業員が働きやすい会社」と「会社として成り立つ経営」を両立させる。
  • 自分のやるべきことを絞る、自分の人生に合わせた売上を稼ぐ、というキーワードは、「働き方」そのもの。
  • 「穏やかな成功」を目指そう。