【君主論】援軍について【自分の国は自分で守る】

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 『君主論』第一二章の指摘は、傭兵隊が役に立たないばかりか有害である、と。

 第一三章では、外国からの援軍に対する反対論。
 まとめると、傭兵も援軍も役に立たないどころか有害なのだから、
「自分の国は自分で守りましょう」
というのが、マキアヴェッリの主張である。 

援軍反対論

要するに傭兵に関して最も危険なのは彼らが無気力なことであり、援軍に関して最も危険なのは彼らが有能であることである。

 「援軍」のほうは、有能だから困るのはなぜか。
この軍隊はそれ自身としては有益で秀れているが、それを招き入れた人にとっては常に有害である。なぜならばそれが敗北すると招き入れた者も滅亡し、他方援軍が勝利するとそれを招き入れた者はこの軍隊の虜になるからである。
 有能な味方が破れでもしたら、敵はそれ以上に有能だと証明してしまったことになるから、破滅は必至。
 勝ったところで、今度はその援軍に、文字通りの「虜」にされてしまわないまでも、心理的な負担にもなるだろう。
 それゆえ、勝利を得ようと考えない人は、援軍を利用しても良いが、それは実は傭兵よりも危険であり、破滅は必至である。
 傭兵は、無能で無気力だから、役に立たない。
 援軍は、有能だから、脅威になる。

証拠

失敗例

  • 教皇ユリウスがイスパニア王フェルナンドの助けを得て、フェラーラを攻撃したこと
  • フィレンツェがフランス人にピサの攻撃を依頼したこと
  • コンスタンティノポリスの皇帝がトルコ人を使って、ギリシアを攻撃したこと
  • ルイ十一世がスイス人を雇ったこと

 フィレンツェがフランス人に依頼してピサ攻撃したことの失敗例は、これが詳しい。
 マキアヴェッリの「憤怒」がどれほどのものであったか―――――もしかしたら、「惨めさ」だったかもしれない。
 「祖国愛」なくして、これは書けない。

成功例

  • チェーザレ・ボルジア
  • シラクサのヒエロン

 単なる「批判」あるいは「悲憤慷慨」では終わっていない。
 チェーザレやヒエロンのやり方を見て、
「フィレンツェもこうであってほしかった」
という思いであったのだろう。切実に。

自分の国は自分で守る

自己の軍隊を持たない限り、いかなる君主権も安泰ではなく、逆境にあって自らを防衛する能力に欠けるため完全に運命の意のままに引きずりまわされる、と。『自らの力に基づかない権力や名声ほど頼りなく、不安定なものはない』というのは常に賢人の抱く見解であり、箴言であった。

 要するに、
「自分の国は、自分で守ろう」
というのがマキアヴェッリの主張である。