【読書】『愛着障害』【愛着は人間関係の土台なのです】
キッカケは『カサンドラ症候群』を読んだこと。
「愛着障害」に興味をもったしだい。
人間が幸福に生きていくうえで、もっとも大切なものは、安定した愛着である。
愛着の問題は親子関係を直撃しやすい。
とはいえ、問題のなる親に育てられながらも、立派に育った人の例は本書にも登場する。ほかの本にも例がある。
進学、就職、パートナーとの出会い。そのどれもが「愛着障害」の克服につながる。
しかし、裏を返せば、どれもが「愛着障害」のキッカケにもつながるのではないだろうか?
軽度なものから重度なものまで、この方向に向かうこともあれば別の向かう方向に向かう、あの人にはこうだがこの人にはこうだ、元気なときと疲れているとき、などなど。
「愛着障害」と言われるとギョッとするかもしれないが、パターン、スタイルと言われると、ある程度はありそうな気がする。また、ときどきそういうことをしているな、されているなと感じることもあるかもしれない。
「愛着障害があるかないか」という視点で読むべきなのかもしれないが、そうではなく「何かに問題がある」と感じたときに愛着の観点から捉え直してみると、解決法が見つかるかもしれない。
人間が幸福になるための土台が「愛着」であるとすれば、人間関係の土台も「愛着」である。
「愛着」の視点を抜け落としてはならない。
愛着スタイル
愛着がスムーズに形成されるために大事なことは、十分なスキンシップとともに、母親が子どもの欲求を感じ取る「感受性」をもち、それに速やかに応じる「応答性」を備えていることである。
子どもは、いつもそばで見守ってくれ、必要な助けを与えてくれる存在に対して、特別な結びつきをもつようになる。
求めたら応えてくれるという関係が、愛着を育むうえでの基本なのである。
この世界が安心できる場所で、人は自分の助けになってくれるものだと信じることができる感覚である。これは、物心がつくよりもはるか以前の体験によって、脳の奥深くに組み込まれる。
愛着は、基本的安心感や基本的信頼感と呼ばれる感覚を生んでいく。
子どもの愛着パターンは、安定型、回避型、抵抗/両価型、混乱型に分類され、大人の愛着スタイルは、安定型(自立型)、不安型(とらわれ型)、回避型(愛着軽視)に分類される。
また、3分の1は不安定型であるという。
となると、カップルのどちらかが不安定型である確率は50%を超える(2/3×2/3=4/9)。
安定型愛着スタイル
- 対人関係における絆の安定性。
- 自分が困ったときや助けを求めているときには、それに必ず応えてくれると信じている。だから、気軽に相談したり、助けを求めたりすることができる。
- 人がどういう反応をするかということに、あまり左右されることがない。
- 自分の気持ちを偽ってまで相手に合わせるよりも、自分の考えをオープンにさらけ出したほうが、相手に対して誠実であり、お互いの理解につながると考えている。
- 自分の意見や気持ちを口にすることイコール、相手を否定することではないからだ。
- 相手の主張によって自分が脅かされたとは受け取らないので、客観的なスタンスを保ちやすい。
回避型愛着スタイル
- 距離をおいた対人関係を好む。
- 縛られない。人にも依存しなければ、人から依存されることもなく、自立自存を最良とみなす。
- 他人に迷惑をかけないことが大切だと、自己責任を重視する。
- 人とぶつかり合う状況が苦手で、自分から身を引いたり、短絡的に反応し、攻撃的な言動に出ることもある。
- 相手の痛みに無頓着なところもあるので、相手を傷つけていることに気づかない。
- 冷静そうに見えて、切れると爆発する。
- 何に対しても醒めていて、本気で熱くなるということが少ない。
- 自己開示を避ける結果として、自己表現力が育ちにくい。
- 表情と感情が食い違っている。
- 仕事と趣味などの領域で自己主張をする傾向が強く、そういった領域が聖域であり、誰からも侵されることは好まない。
不安型愛着スタイル
- 相手の表情に対して敏感で、読み取る速度は速いものの、不正確であることが多い。
- 不安型の人にとって一番の関心事は「人に受け入れられるかどうか」「人に嫌われていないかどうか」ということにある。
- 「愛されたい」「受けいれられたい」「認めてもらいたい」という気持ちが非常に強く、拒絶されたり、見捨てられることに対して、極めて敏感である。
その結果として、相手に逆らえず、都合のいいように利用されることも多い。
逆に、猜疑心から支配的なタイプになることもある。相手の行動を束縛したり、監視したりということも起きやすい。 - 相手に見捨てられることを怖れる一方で、相手のプライドを傷つけるような言葉を口にする。その根底には被害感があるのだが、相手からしたら妥当性を欠いているので、見放されてしまう。
恐れ・回避型愛着スタイル
- 対人関係を避ける面と、人の反応に敏感で見捨てられ不安が強い面の両方を抱えている。不安定なものになりやすい。
- 自分をさらけ出すのが苦手で、うまく自己開示できないが、その一方で人に頼りたい気持ちも強い。
- 不安型の人のように器用に甘えられないが、回避型のように一人でもいられない。
愛着障害の特性と病理
- 親との確執を抱えるか、過度に従順になるか。
- ほどよい距離がとれない。
- 傷つきやすく、ネガティブな反応を起こしやすい。
- ストレスに脆く、うつや心身症になりやすい。
- 非機能的な怒りにとらわれやすい(非機能的怒り:問題解決よりも、相手を精神的・肉体的に痛めつけようとする)。
- 過去にとらわれたり、過剰反応しやすい。
- 「全か無か」になりやすい。
- 全体より部分にとらわれやすい。
- 意地っ張りで、こだわりやすい。
- 発達の問題を生じやすい。
- 自分を活かすのが下手。
- キャリアの積み重ねも場当たり的。
- 依存しやすく過食や万引きも。
- 青年期に躓きやすい。
- 子育てに困難を抱えやすい。
- アイデンティティの問題も生じやすい。自分が自分であるということに違和感もつ。
- 反社会的行動の背景にも多い。
- 誇大自己と大きな願望(バランスのとれた自己愛、身の丈にあった自己愛をもてない)。
と、本に書いてあることをそのまま箇条書きにしてみたのだが。
全部当てはまることはないだろうが、一部とか、部分的にとか、大なり小なりとか、ごくまれにとか、時々とか、はありそうな気がする。
「平気でうそをつく人」とか「他人を傷つける人」とかに出会ってしまったとき、強くて大きなショックやストレスを感じたときとか、やってしまいそうな気がする。
愛着障害の克服
難しいケースほど、カウンセリングや通常の認知行動療法では、なかなか効果が得られにくい。それどころか、悪化したり、治療者と患者の関係がこじれたり、決裂してしまう。
通常行われている治療の多くは、比較的安定した愛着のケースに通用するもの。愛着障害の改善には効果がないどころか、悪化させる要素を含んでいる。
精神分析は、患者が語る言葉をひたすら聞き、それに対して共感ではなく解釈を与えることによって、洞察を生み出すという治療。
しかし、分析医にとっては、患者に同情したり、優しくしたりすることが仕事ではない。
残念ながら、今も行われ続けている精神医療の大部分は、愛着や愛着障害が、種々の精神疾患の成因や回復において、どれほど大きな役割を果たしているかということについて、十分な認識や対処の術をもたないのが現状なのである。不安定な愛着しか持たないものがそんなことをされたら、ひどく愚弄されたように感じる。
これは悲しむべき事態だといえるだろう。心を扱うはずの精神医学が、心を支える土台ともいうべき愛着を扱うことを軽視し、回避してきたのである。
逆にいえば、どういった治療法をとるにせよ、愛着障害の部分にうまく手当てを施せば、改善する。
そして、不安定型の人を支えようと頑張るのは、しばしば同じ不安定型の人であることが多い。その気持ちや苦しさが分かるからだ。
しかし、どちらも不安定すぎると、支えるほうも巻き込まれて、共倒れということになりかねない。
結局、相手をうまく支え、回復へとつながっていくためには、支える方が不安定型愛着を、ある程度克服していることが重要なのである。
安全基地となる存在
愛着の原点は、親との関係で育まれる。そこで躓いた場合、第三者の関わりが不可欠になる。
その場合、第三者が安全基地として機能している、ということである。
安全基地とは、いざというときに頼ることができ、守ってもらえる居場所であり、そこを安心の拠り所、心の支えとすることのできる存在である。
よい安全基地になるためには、本人自身の主体性が尊重され、彼らの必要や求めに答えるというスタンスが基本なのである。
- 安全感を保証する
- 感受性(共感性)
- 応答性
- 安定性(一貫性)
- 何でも話せること
愛着の傷を修復する
本当の意味で安定した、バランスの良い愛着スタイルを手にするためには、未解決の傷を修復する必要がある。
修復過程は、ある意味、赤ん坊のころからやり直すことである。
傍からみれば悪化したように見えるかもしれない。しかし、その意味を知る人には、回復の第一歩ということが分かる。
愛着障害の人は「自分が他人から受け入れてもらえる」と信じることができない。人を信じることができるためには、みずからの価値を肯定してもらえるという体験が必要なのだ。
役割と責任をもつ
自分がやるべき役割を担い、それを果たそうとして奮闘するうちに、周囲の人との関係が安定する。
親密さをベースとする愛着関係というものは、愛着障害を抱えた人にとっては、もっとも厄介で難易度の高いものである。
むしろ、社会的な役割や職業的な役割を中心とした関係は、親密さの問題を棚上げして結ぶこともできるし、仕事上の関わりとして割り切ることもできる。
役割をもつこと、仕事をもつこと、親となって子どもを持つこと、どれも愛着障害を乗り越えていくきっかけとなる。
どんなに愛着回避が強く、人付き合いが苦手な人でも、必要に駆られて関わりをもつようになれば、対人スキルが向上するとともに、人と一緒に何かをする楽しさも体験するようになる。
アイデンティティの獲得と自立
どんな人に対しても、否定し続けていれば、ダメな方向に向かっていく。よいところを見つけて肯定していれば、どんどん良い方向に成長していく。
自立の過程とは、自分が周囲に認められ受け入れられる過程であり、同時に、そうした自分に対して「これでいいんだ」と納得する過程でもある。
愛着障害の人は、原点において他者に受け入れられることがうまくいかなかったのであり、自分を受け入れることにも躓いている。
この両方のプロセスが必要であり、どちらか一方では足りない。