【読書】『未来の年表2』【これから起きることと、個人でできる対策】
少子高齢化で起きること
事故は家の中で起きる
内閣府の公表している「高齢社会白書」によると、65歳以上の事故発生場所は「住宅」が突出している。
要因別では「不慮の溺死及び溺水」「その他不慮の窒息」「転倒・転落」がトップ3である。
高齢ドライバーが加害者となる交通事故がニュースになるが、交通事故は減っている。
むしろ、家庭内の事故のほうが多いのである。イメージに惑わされてはならない。
内閣府「高齢社会白書について」(参照:https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/index-w.html)を読んでおくといいだろう。
相続不明地の増加
かつては、相続をめぐる争いで親族がいがみ合っていたが、少子化の影響で過去のものになりつつある。
一人っ子が増えてしまったため、争う相手がいない。それよりも、子どもがいなければ、相続する人がいなくなる。
空き家が空き地が広がり、「所有者不明土地」が増大している。全国で約410万haに及ぶという。九州を上回る面積になっている。
所有者・管理者が不明なら、家も土地も荒れ放題になる。治安も景観も悪化すれば、地域のイメージダウンにつながる。
公共事業や民間の再開発事業でも、土地の取得の妨げになる。
所有者を探す自治体の事務負担も重くなっている。
資金も東京一極集中
働き口の無くなった若い世代は、仕事を求めて都会に流出する。しかし「東京一極集中」を人の移動だけでとらえると間違える。
大都市圏に引っ越す人は、大都市圏での銀行口座を開設する。地方に住む親が死去し、遺産マネーを相続すれば、自分の口座に預金を移す。結果、地方銀行から、ゆうちょ銀行や都市銀行に預金が移動する。
地方銀行から都市銀行への資金移動は、地方銀行の金融資産を減少させる。結果、地方銀行の競争力が失われる。
地方銀行から融資を受けようにも、資金不足で融資が受けられない。融資先が減れば、雇用の受け皿は減る。働き口が減れば、仕事を求めて都市圏へ・・・・・
こうして、都市圏への人口流出が加速し、預金流出はさらに加速する。
失われた30年の影響
「失われた30年」の影響で、現代の40代以下の世代は思うような職につけなかった。
賃金の抑制や不安定な働き方は、日本の少子化を加速させた。
運良く正規雇用で安定した働き方ができたとしても、これまでの世代ほど恵まれているわけではない。人件費抑制のため年功序列の賃金体系が崩れ、賃金が伸びない。
管理職のポストに先輩社員が居続ければ、ポストに空きが出ない。あるいはポストそのものが削減される。万年「ヒラ社員」のまま留め置かれればモチベーションが下がる。その結果、生産性は上がりにくい。
「自分たちは『逃げ切り世代』で良かった」と語っている高齢者もいるが、景気が落ち込みでもすれば、税負担増という形でツケを支払うハメになる。
「逃げ切り」はどの世代にも許されない大問題なのだ。
東京圏で起きること
空き家の増大
幽霊屋敷のようになってしまった空き家は、過疎地の一軒家のイメージが強いが、これも誤解である。これからは大都市圏で起きる。
空き家「率」で見ると地方の方が高いが、空き家「数」で見ると大都市圏のほうが多い。人口が減っているのにもかかわらず、住宅を建設し続けてしまったからだ。
また、ライフスタイルの変化は、住宅需要の変化も引き起こした。
団塊の世代は、子どもを育てるために広い居住スペースを求め、通勤時間を犠牲にして郊外に住宅を求めた。
一方、現在の若い世代は、夫婦共働きが当たり前になっている。通勤時間が犠牲にできないため、都心に回帰している。
一軒家以上に問題を抱えるのはマンションである。マンション自体は堅牢なつくりであるが、定期的に大規模修繕が必要となる。
マンションの開発・販売業者は、割高感が出ないように新築時の修繕積立金を安く設定する。結果、住民たちが購入後に自主的に段階的に値上げをしなければならなくなる。世帯数が多いため、合意形成が難しくなる。
そこに、建設人材の不足と資材価格の上昇が、修繕費をかさませている。それがさらに合意形成を難しくする。
また、住民の高齢化により、年金暮らしの入居者が増えている。その結果、管理費や修繕積立金の滞納も増えている。
そもそも、マンション自体に空き室が増えている。親から子どもに相続しようにも、子供世代のライフスタイルの変化は上述した通りだから、空き室は増える。
結果として、管理組合が機能しなくなり、思うように修繕が進まない。劣化したマンションは人気が無くなり、さらに空き室が増えるという悪循環を生む。
公共交通機関の縮小
公共交通機関は、利用者が減ると運賃を値上げし、それがさらに利用者離れを起こすという負の連鎖を起こしてきた。
今までは地方の問題だったが、これからは都市圏でも起きる。上述のように、団塊の世代は郊外に住居を求めたが、現在の若い世代は都心に回帰している。
それゆえ、一口に「東京圏」といえども沿線格差が起きている。東急田園都市線などでは利用者増加が見込まれている。一方で、東武伊勢崎線や、郊外に続く小田急小田原線は減少が見込まれている。
東京圏といえども、高齢化が進む地域では利用者が減少する。利益の上げにくい路線は、減便が予想される。
また、勤労世代の減少により、運転手の確保が難しくなっている。休日出勤や長時間労働の是正も迫られている。
黒字路線の儲けで赤字路線の補填をする、というビジネスモデルも、運転手の絶対的な不足の前では通用しない。
個人でできる戦略的な縮み方
「戦略的に縮む」に賛成の立場をとろうが、反対の立場をとろうが、効率化に反対の立場をとる人はいないはずだ。経営者の立場に立てば人件費削減、労働者の立場に立てば、仕事がラクになる。仮に働き手が1000万人減っても、社会の効率化で1000万人分の仕事量を減らせるならば、実質的に労働力不足は起こらないとの立場をとった。
しかし、「縮む」ということは、決して「衰退」や「負け」を意味するわけではない。要は、その”やり方”なのである。私は、売れるモノ、儲かるモノに注力し、無駄な仕事は減らすようにしている。はたして、売れないモノ、儲からないモノ、無駄な仕事から撤退することが「衰退」「負け」なのだろうか。
河合さんのおっしゃる通り”やり方”の問題だ。河合さんの提案は、次の8つである。
働けるうちは働く
老後の生活資金に不安があるなら、働けるうちは働いた方がいい。
また、健康管理面で見ても、リズムのある生活をつづけた方がいい。
また、雇う側の意識改革も必要だ。定年退職後の再雇用で必要以上に給料を下げれば、働く側はやる気が失われる。これから迎えるのは少子高齢化と人口減少社会である。やる気と能力のある人材なら、年齢を問わずに確保したほうがいい。
そして、このシステムは、労働者側の意識改革にもつながる。定年退職後に高給で再雇用してくれるとなれば、現役時代からやる気も能力も発揮する。
1人で2つ以上の仕事をこなす
空いた時間を有効活用し、副業、兼業を行うことだ。
情報漏洩リスクがある、ダブルワークで身体を壊すリスクがある。自己管理能力が求められる。
とはいえ、現状では新卒から定年まで一つの会社で働くことが難しくなっている。複数のキャリアを持っていれば、倒産廃業というリスクに対応できる。
それに、複数のキャリアは、複数の知識とスキルの獲得につながる。本業にも好成績を残せるようになるだろう。
家の中をコンパクト化する
物忘れをした高齢者が、役所から届いた書類を無くしてしまって、家族で大騒ぎになる、という例があるそうだ。また、暖房している部屋とそうでない部屋との寒暖差で「ヒートショック」を起こしてしまい、命の危険が高まる。
そうならないように、はじめから使う部屋と使わなない部屋を分け、整理してコンパクトにしてしまえばよい。
それに「広さを求めて郊外に・・・・・」というのなら、狭ければ郊外に出る必要はない。
さらに、部屋が片付いているのなら、万が一の事態が起きても、後の世代に迷惑をかけなくて済む。
ライフプランを描く
晩婚・晩産の影響で、子育てと親の介護のダブルケアが生じるリスクが高まっている。一人っ子同士の結婚も多いため、親の介護の負担も大きい。
また、定年退職後に子どもが大学に入学、ということもある。
政府にしても、労働力不足と介護の担い手不足という問題を抱えている。
晩婚・晩産の影響は、思わぬことを生じさせる。ライフプランは周到に立てることだ。
年金受給開始年齢を繰り下げる
年金受給開始年齢を繰り下げれば、最大で84%増える。これに関しては「日本年金機構」のHPを参照していただきたい。
何歳まで健康に働けるのか、自分が何歳まで働きたいか、何歳からもらえばオトクかは、個々人の事情によるので、早めに考えておきたい。
また「働けるうちは働く」とセットになって考えたい。
河合さんは「起業」を提案している。たしかに、高齢者になっても自分らしく働ける仕事は、今の日本社会では見つけられないかもしれない。それなら「起業」してしまうのも手だ。
いずれにせよ、現役時代から、準備を進めておきたい。
全国転勤を無くす
待機児童が多いのも問題だが、それをようやく乗り越えたころに、夫婦どちらかが転勤、となれば一からやり直しになる。
それに、転勤制度が夫婦共働き時代に合わなくなっている。どちらかの転勤に相手がついていけば、キャリアが阻害される。単身赴任ともなれば、子育てが阻害され、少子化が加速する。
そこに親の介護が加わると、ダブルケアの負担が増大する。
せめて、子育て中、介護中は転勤をさせない、あるいは勤務地を選べるようにする。終了後に再度選択できるようにするシステムを構築することだ。
テレワークを拡大する
個人の職責や成果を明確にした業務システムが確立できれば、勤務時間の柔軟運用や、在宅勤務も図りやすい。
往復の通勤電車の時間、それによる疲労、そして企業には通勤手当というコストがかかる。
日本企業では、多くの人が顔を合わせて仕事をするという慣習が続いている。だが、その効果は勤務時間の柔軟運用でも在宅勤務でも可能なはずである。
「サボる人がいるから」という不安もあるだろうが、顔を合わせていてもサボる人はサボる。勤務時間の柔軟運用と在宅勤務とは別の問題だ。そもそも、個人の職責や成果を明確にした業務システムの確立のほうが、サボる人は排除できる。
むしろ、生産性の向上を目的としたシステムの構築を図る方が重要である。
商店街を時おり開ける
日用品を取り扱う小売業の場合、地域人口の減少は経営を直撃する。高齢化により嗜好も変わるが、技術進歩で売れるモノも変わる。
自家用車を運転して郊外の店舗に行く人が増えたため、商店街の店舗はシャッターを下ろしている。シャッターを下ろす店舗が増えてくれば、商店街は維持できなくなる。
とはいえ、自家用車を運転できない高齢者に商店街は必要だ。ネット通販を利用しようにも、ドライバー不足で荷物が届くのが遅くなる。
そこで、時間や曜日を限定して商店街を開ける。
各店舗がバラバラに店を開けてしまうと、賑わいが出ない。日時を限定することで、賑わいを出し、集中的に集客する。
また、日時を限定すれば、人件費も削減できる。