【読書】『小説 イタリア・ルネサンス2―フィレンツェ―』【ケーキの大きさと切り分け方】
ルネサンス期のイタリアが舞台。主人公はヴェネツィア元老院議員マルコ・ダンドロ。
公職追放3年になってしまったので、これを機にフィレンツェを見に行くことにしました。
ところが、滞在中の宿「半月館」の主人が事件に巻き込まれてしまったので、マルコは一肌脱ぐことに。
その話のネタはバラしません。
同じ時代、そして同じイタリアなんだけど、ヴェネツィアとフィレンツェがどうしてこれほど違うのか?
いろんな分析方法があるけれど、経済と政治をケーキの大きさと切り分け方で例えるのが面白い。経済がケーキの大きさなら、切り分け方が政治。
ヴェネツィアは、ケーキも大きいし、その切り分け方も大衆が納得する程度に公正だから、貴族が統治する寡頭制を敷き続けることができる。
一方のフィレンツェは、ケーキも小さくなっているし、切り分け方も不公正。
「倉廩実ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る」といったのは『菅子』だが、物質的満足を得られれば、大衆は納得する。
しかし、すべてを満足させることはできない、となると政治の「能力」が求められるんだけど、フィレンツェは「政体」の方に問題があると考えてしまった。
ということで、政体がコロコロ変わってしまうんだけど、これでは一貫した政治などできるわけがない。
そうなると、不満足な人が多すぎて、不満足が多数派になる。つまり、野党が多数派。そして、ますます混乱する―――――カオスである。
そして、この時の領主は、公爵アレッサンドロ。
やることは、酒と女で、気晴らしのために重税をかける。
ヨーロッパ最強の君主、スペイン王カルロスの娘と結婚とすることで、どうせ公爵になれたんだろうと、軽蔑される。
「憎悪されることと、軽蔑されることは避けろ」とマキアヴェッリが『君主論』で、せっかく教えてくれたのにね。