【読書】『データで読み解く「生涯独身社会」』
「未婚者が増えている」のは「思い込みの罠」にはまっているからだ、ということがデータから見てとれる。パートナーを欲しいと願う1人でも多くの男女が、未婚化の背景に広がる「思い込みの罠」から抜け出し、パートナーと出会える日が訪れることを心から願っています。
「ファクトフルネス」を思い出しながら読み進みました。
宿命本能:すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み「宿命本能」のおかげで、日本社会が大きく変化していたことに気がつけない。
いろいろなもの(人も、国も、宗教も、文化も)が変わらないように見えるのは、変化がゆっくりと少しずつ起きているからだと気づくこと。
そして、小さなゆっくりとした変化が積み重なれば大きな変化になると覚えておくこと。
宿命本能を抑えるには、ゆっくりとした変化でも、変わっているということを意識するといい。
●知識をアップデートしよう。
賞味期限がすぐに切れる知識もある。
●おじいさんやおばあさんに話を聞こう。
●文化が変わった例を集めよう。『ファクトフルネス』(抜粋)
本書から学んだ「大きな変化」を書き留めておきます。
- 農業人口が激減した。
- 結婚はそれほど生活費はかからない。
- 「思い込みの罠」から脱出しよう。「宿命本能」を抑えよう。
よくある誤解
- 未婚化は、男性よりも女性の方が深刻だ
- 夫婦が産む子どもの数が減ったことが、少子化につながった
- 「結婚したくない」「子どもは欲しくない」と考える若い男女が増えている
- 長期不況で雇用が悪化したせいで、未婚化が進んでしまった
- 高学歴化した女性が男性を選り好みするようになり、結婚しにくくなった
- バリバリ働く女性が増え、専業主婦が減ったことが少子化につながった
- 結婚すると、お金の面で損をすることが多い
- 親が「老年期」に入ると、子どもとの同居率が上がる
- 親の介護など、家庭の事情で結婚を諦める人は多い
- 男性は出産しなくていいから、婚期が遅れても子どもを授かれる
- 男性は高齢になっても若い女性と結婚できる
- 身内との同居率が高いのは、子どもの独立志向が低くなってきているから。
日本の社会が変わった
農業人口の激減
1960年には3400万人以上いた農業人口が、2010年には260万人へと、約8%まで減少しました。
たった50年の間に、激減してしまったのです。
「農耕民族」から「狩猟民族」へ
日本と欧米ではそもそもDNAが違うということで、こんな話をしています。
欧米においては「自らの狩場を親とは別に持つ」ことこそが「子どもの自立」です。それができないと、同じ狩場に生息する(獲物)動物を取り合うことになり、親子共倒れになりかねません。そのため、「子どもが親と離れて暮らし(それぞれ別の狩場を持ち)、自らの食料を自らの力で確保するための力を子どもに授ける」ことこそが、成長過程にある子どもに与えうる親からの最大のギフトになります。
一方、「同じ釜の飯を食う」という言葉もあるように、日本では長らく、家族や仲間が体を寄せ合うようにして暮らすことは当然のことであると考えられてきました。現代文明でこんなことを考えると疑問に思うが、農業をしている人が減っているということは、自分が農業をする確率も低くなったということ。
すなわち、第二次産業か、第三次産業に従事する可能性が高い、ということ。
農業人口が8%まで激減しているのに、農耕民族の発想でしかライフスタイルをデザインできないとどうなるか?
第二次産業も、第三次産業も、働き先が多くの場所にあるということだ。それなのに「定住」にこだわってしまうと、働き口の選択肢が減ってしまうことになる。
ビジネスチャンスという点でとらえても、東京では売れなくても、ここでなら売れるということもあるはずだ。これも「定住」にこだわるとチャンスをフイにすることにつながる。
「農業人口が激減した」ということは「定住にこだわるとデメリットがある」「移住する方がチャンスがある」ということにつながる。
そうなると、狩猟民族の発想でライフデザインを考える、すなわち、おいしい狩場を探すように、おいしい働き口を探す方が、チャンスは多い。
親世代・会社の先輩の価値観が通用しない
これは親が悪いとか、先輩が悪いという話ではない。
1960年当時30歳の親が子どもを産み・育てていくのは80年代当時の発想。そして30年後、1990年にその子どもがとなり、子どもを育てていた2010年には農業人口が3400万人から270万人に減っている。
親世代や祖父母世代がこの変化に気づかなかったら、農耕民族のライフスタイルのデザインしか教育できないのは当たり前だ。
これは会社の先輩後輩でも同様のことが言える。2010年にそろそろ定年の60歳が就職したのは1970年前後。そのころだって農耕民族のライフデザインが当たり前だ。勤続40年の間に社会が激変したのに気がつかずにアドバイスをし続けていたら?
自分たちの世代では最適なアドバイスが、若手にとってはクソバイスになっている可能性がある。
「アドバイスが悪いんだ!」とクレームをつけるわけではない。それは僕が同じことをしてしまう可能性があるからだ。
意識・無意識に関わらず、子どもや後輩に対して最適なアドバイスだと思い込んでいたら、クソバイスになっている可能性があることを頭の中に入れておこう。
だから、知識をアップデートしよう。世の中が変わったことを受けとめよう。
生活費計算法
実際に結婚生活を送っている既婚者に比べ、未婚者は「結婚に必要な最低限のお金」を多く見積もりがち人が多いようです。
それは何故か?
そして、その結果どうなるか?
OECD(経済協力開発機構)の計算方法
2人暮らしでかかるコストは、「1+1=2」ではなく、「1+1=√2」となる。
なんでそうなるのかは書いてないから推測するしかないのだが、1人暮らしから2人暮らしになっても、家賃が2倍になることはないし、冷蔵庫が2倍になるわけではない。水道光熱費だって2倍にならないし、食費にいたっては規模の経済が働く。
そう考えると「√2=1.41」というのはなんとなく当たっているような気がする。
しかし、よく思いついたものだ。
誤解の原因
上の計算方法で考えると、「1人当たり約0.7」の生活費しかかからない。したがって、「収入が少ないから結婚しない」ではなく、「収入が少ないから結婚したほうがいい」ことになる。
では、なぜ誤解するのか?
親と同居していて3人家族の場合、「√3」で生活費は1.73。すなわち、一人当たり0.557。
もし、3世代同居なら「√5」で2.24。すなわち、一人当たり0.447倍。
親と同居、あわよくば祖父母まで同居、していた場合、ほぼ半分の生活費しかかかっていない。
それと比べると「結婚したら1人当たり0.7」という生活費がとても高く感じてしまうのだ。
長期子どもポジション・キープ
特異な姿に見えるけど、意識無意識に関わらず、上の計算式でお金のことだけ考えたら、当然の選択になる。「子ども部屋おじさん」という言葉があります。インターネット上のスラング(俗語)で、広義には「社会人になっても親元を離れず、学生時代と同じ子ども部屋に住み続けている未婚の中年男性」を指します。
それに、経済的メリットだけではない。心理的メリットもある。
結婚してその相手と上手くいかなかったら、と考えると気心しれた両親との同居を選ぶ。面倒な、家事、家計管理、近所付き合い・・・・・を自分でやらなくていい、両親にまかせられる、放り投げられる。
かくして、親との同居を選択し、結婚しないという選択をしている。
それを天野馨南子さんは「長期子どもポジション・キープ」と呼んでいる。
親や祖父母との同居を選択。これは経済的メリット・心理的メリット双方あるけれど、世の中そんなに甘くない。
上述したように、農業人口が激減したのだから、定住のデメリット・移住のメリットがあるのだ。親や祖父母と同居ということは、定住のデメリットが残り、移住のメリットを得られないことになる。
「長期子どもポジション・キープ」は自分で自分の首を絞めているだけだ。
知識をアップデートしよう
しかし、ただ悔しがっていても、私の子どもの未来は明るくなりません。
自分の子どもの世代には、「思い込みの罠」を引き継がないような社会にしたい、強く決意しました。
誤った思い込みが原因で行動を見誤り、のちのち希望が叶わない、ライフデザインを変更せざるをえない、失望する・・・・・というようなことがあるならば、客観的なデータによって「思い込みの排除」をまず行うことが非常に大切だと考えています。作者からやさしさを感じるのは、こういうたくましさなのだろう。
たしかに、悔しがっていても何も変わらない。変えたければ現状を認識して、適切な行動をとれるようにすること。
現状の正しい認識を得るには「思い込みの罠」から脱出すること。『ファクトフルネス』式に言えば、「宿命本能」を抑えて、知識をアップデートすることだ。
正確な地図がなければ道に迷ってしまうように、正しい知識を身につけよう。
そのためには、知識をアップデートすることだ。
まとめ
- 農業人口が激減した。
- 結婚はそれほど生活費はかからない。
- 「思い込みの罠」から脱出しよう。「宿命本能」を抑えよう。