【君主論】自由な国制は破壊せよ【マキアヴェッリはフィレンツェ人】
ということで、自由な国制の地域を支配し始める際、三つのオススメ方法を提示してくれています。獲得された地域が自らの法に従って統治され、自由な国制の下での生活に慣れ親しんでいる場合、その地域を保持しようとする際には三つの方法がある。
マキアヴェッリがオススメする自由な国制の地域の支配の始め方
- その都市を破壊すること
- 支配者自らがその地に赴いて居住すること
- その地域のほうに従った統治を認めつつ税を徴収し、支配者との友好関係を保つような寡頭制をそこに樹立すること
征服した土地が君主国であるなら「君主の血統を根絶やしにする」こと。自由な国制の国なら「その都市を破壊する」こと。
征服地の統治方法も「支配者自ら赴く」を勧めているが、自由な国制の場合でも「支配者自ら赴く」ことを勧める。
それができないのなら、自分にとって都合のいい寡頭制をつくること、である。
君主の統治に慣れている地域は簡単
マキアヴェッリに言わせると
ある都市やある地域が君主の統治に親しんでおり、しかもその君主の血統が絶えた場合、彼らは一方で服従するのに慣れ、他方で旧来の君主が存在せず、さればと言って彼らの中の一人を君主とするのに合意もせず、自由な国制を営む能力を持たない。そして武器をとるにも遅々としており、君主は容易にそれを手中におさめ、確保することができる。「君主の血統を根絶やしに」してしまっているのだから、君主やその血統の問題は解決している。
そして、旧来の君主の臣民は、「反乱する気概も能力もない」のだから問題が発生しても、些末なものである。
ピサを見ろ
―――――マキアヴェッリはフィレンツェの人であり、ピサ問題に頭を悩ませていたのである。そのことはフィレンツェに従属後百年にしてかかる行動をとったピサに好例を見いだすことができる。
”自由な国制を享受していた都市に対する支配権を維持する最も安全な方法とは、それを破壊することにほかならない”と言い、続けて
それというのもかかる都市は自由の名やその昔の制度を口実にしては常に反乱を起こし、しかも自由とか、昔の制度とかはどんなに時間がたっても、どんなに恩恵を施しても決して忘れ去られはしないからである。どのような政策がとられようとも、その都市の住民が分割され散り散りにならない限り、自由という言葉や古い制度は忘れられることはなく、何か出来事があれば直ちに以前の統治様式に帰ることになる。マキアヴェッリはピサの攻撃をフランス人に依頼する、という外交使節をしている。
これを読めば、マキアヴェッリの苦労に同情することができる。
マキアヴェッリのフィレンツェに対する「祖国愛」からの提言だ。