【君主論】強大な君主はどうすればよいか【さらに強大になること】
『君主論』第一一章「教会の支配権について」である。
教会の支配権は特別で、
・獲得するには、能力と幸運を必要とする
・維持するにはどちらも必要ではない
この君主のみが、防禦の必要のない領土を持ち、統治する必要のない臣民を保有している。どうやって手に入れたらよいか、中世キリスト教会史を研究しなければ答えは出せませんが、手に入れてしまえば、しめたもの。
考えてみれば、単なる強国よりも教会は有利なのです。
では、教会はどうすればいいのか?
さらに強力になっちまえ。
当時のイタリアの問題
フランス王シャルル八世が侵入する以前のイタリアは、教皇、ヴェネツィア、ナポリ、ミラノ、フィレンツェの五大国時代。
そこでは、
①外国人が侵入してこないか?
②このうち誰かが――とくに、教皇とヴェネツィアが――領土をさらに拡大しないか?
この二つが重要課題。
ヴェネツィアを抑えるには他の支配者の団結が必要であり、教皇を抑えるにはローマの貴族たちが利用されていました。
教会の強大化
アレクサンデル六世が即位する、息子チェーザレ・ボルジアを利用して、教会の領土を広げます。
チェーザレは、はじめフランス軍に援軍を依頼しますが、不安を感じて、オルシーニとヴィッテリを雇い入れます。しかし、この傭兵も頼りないと感じたため、自己の軍隊を活用します。
そして、チェーザレは教会の強大化に成功しますが、アレクサンデル六世と同時に病に倒れ、アレクサンデル六世は死去、チェーザレもイタリアから追放され、死去します。
この二人の果実を得たのは、後を継いだユリウス二世。
・全ロマーニャを獲得
・ローマの貴族の党派が無力化(もっとも、チェーザレが弱体化させていたが)
・蓄財
・ボローニャの獲得
とまあ、ずいぶん教会の強大化につながったものだが、その結果
・ヴェネツィアの弱体化
・フランスをイタリアから追放する
に成功します。
こうなると、シャルル八世が侵入するより前に抱えていた問題が解決してしまったのです。
五大国のうち、他の四国の気に入らない方法で。
自分の国は自分で守る
マキアヴェッリの主張なのですが、自分の国は自分で守ること。
強大国には強大国のやり方があるのです。
「イタリアに外国軍が侵入してきたらどうしよう」と不安なら、追っ払えばよいのです。
五大国の勢力均衡での微妙な平和より、強大な一国に守られた平和の方がよい。
そのためには、
・統治を確立する
・自前の軍隊を揃える
・国内をまとめる
・外交に頼らない
中世の教会や中世のてんでバラバラな状況が、一般理論としてほかに応用するのは難しいかもしれません。
しかし、自分の国は自分で守ること。そのために、国力を高めること。
それは、弱小国であろうと、強大国であろうと、同じことなのです。