【君主論】君主は軍事のことだけ考えろ【現場の情報を入手すること&偉人達のマネをすること】

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 『君主論』第一四章は「軍事に関する君主の義務」である。

君主は、軍事のことだけ考えろ

 実に、マキアヴェッリは、君主は、軍事のこと以外に興味をもつな、と断言する。

武力を持たないために蒙る災厄の中で最たるものは他人による軽蔑である。
 経済力は?
 聖職者は?
と疑問がないわけではないが、マキアヴェッリの時代、イタリアが、特に祖国フィレンツェが、傭兵と外国軍によってメチャクチャにされていたのだから、それに対する憤怒と反省で、言わしめたことなのだろう。
参照:【君主論】傭兵隊に対する批判。そして反省。【証拠を挙げて検証】
参照:【君主論】援軍について【自分の国は自分で守る】
武力を持つ者と持たない者とでは全く比較にならず、武力を持つ者が持たない者に喜んで服従したり、武力を持たない者が武力を持つ従者の中で安全であったりすることは理にかなわない。なぜならば一方が他方に対して侮蔑意識を持ち、後者が前者に対して疑いを懐いているような場合、両者が強調し合うことは不可能であるからである。
 忠誠心は?
 義理は?
 人情は?
とかなんとかは考えない。
 マキアヴェッリの憤怒のほどが読み取れる。

 ちなみに、『韓非子』は「君主は権力を保持せよ」と主張する。
 権力を失った君主がどうなるか?
 殺される、追放される、といった事実から、鶏糞を浴びたといった惨めな例まで挙げている。
 武力でも権力でも、失うようなマネをしないためには、普段から努力と警戒が必要なのです。

 話をマキアヴェッリに戻すが、平時に、つまり普段から軍事の準備をする方法として、「行動」と「精神」に関することのオススメ方法を提示している。

行動の訓練:現場の情報を入手せよ

 「行動」の訓練でオススメするのは、「狩猟」である。
 自分の国をよく知ることにより、防衛の学習ができるのが第一。
 第二に、自国の地勢から、他国の地勢を推測することができるからだ。
 太平洋戦争における日本陸軍の首脳部が、インパール作戦や南洋諸島に対して間違った戦略・戦術・作戦を示して、現場を混乱に陥れて、敗戦した、ことを思い出す。
参照:【読書】『「超」入門 失敗の本質』
 もっとも、マキアヴェッリの時代はイタリアのことだけ考えていればよかったけど、現代はグローバルに考えなければいけないから、「イコール」ではないかもしれないけれど。
 推測する「規模」が違うけど、現場のことを知らない指揮官が出した命令を、現場の人間がどう思うかは、推測できる。
 「てめーの言うことなんか、聞くもんか!」
 君主として、現場のことを知らなかったら、待っているものは、現場の人間からの「侮蔑」である。
 「現場の情報を入手せよ!」
は、古今東西問わない。そして、戦争であろうがビジネスであろうが。
参照:【読書】『キリンビール高知支店の奇跡』【「たっすいがはいかん」の影に隠れたストーリー】

精神の訓練:偉人達のマネをせよ

 精神の訓練でオススメするのは、「歴史に学ぶ」ことである。

偉人達も彼ら以前に称賛と栄光とを体現していた人物を模倣し、その者の立ち居振る舞いを座右の銘としたのであった
ということの証拠として、マキアヴェッリは、
アレクサンドロスはアキレウスを
カエサルはアキレウスを
スキピオはキュロスを
それぞれ、模倣していたという事実を挙げている。
 三国志の英雄たちも、後漢の光武帝・劉秀を模倣していたことを思い出すと、偉人たちの「マネをする」というのは、手っ取り早い成功方法。
参照:【読書】『漢帝国』
 「偉人達の行動を模倣せよ」
とは、マキアヴェッリがおすすめする成功法則。
 そのためには、歴史を学ぶのが手っ取り早いのです。