【読書】『ワーク・シフト』

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いま起きつつある変化は、景気後退だけで説明がつくものではない

 ということで、5つの「変化の要因」を挙げ、3つの「ワークシフト」を提案しています。
 未来を完璧に予想することは不可能ですが、何も考えていなかったら、どこに流されるかしれたものではない。
 なので、いくつかのシナリオを考え、対策を練り、後悔しない人生を送る方法を模索しましょう。

ポイント

  • 変化に目を閉ざすのは「無謀」で「危険」
     なので、5つの変化の念頭におき、3つのワークシフトを選び、後悔しない人生を送りましょう。
  • 変化の5つの要因
    • テクノロジーの進化
    • グローバル化の進展
    • 人口構成の変化と長寿化
    • 社会の変化
    • エネルギー・環境問題の深刻化
  • 3つのシフトチェンジ
    • 【第1のシフト】ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ
    • 【第2のシフト】孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ
    • 【第3のシフト】大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ

変化の5つの要因

テクノロジーの進化

 大学で統計学を学んでいた時には、電卓をたたきまくっていたものです。
 今では、エクセルを使えば一瞬で片付くというのに。
 ちなみに、当時はパソコンが高くて、はじめて買ったノートパソコンが30万もしました(ワード、エクセルなし)。
 電卓たたきまくったほうがいいのか、パソコン買ったほうがいいかは、あの時代は個人の趣味・嗜好の問題になる価格、だと思います。
 統計学の理論を頭に叩き込むために、そしてついでにいろんな数字を頭に叩き込むために、電卓たたきまくる体験は、したほうがいいと思います。
 でも、今では、パソコンが安くなったから、価格の問題はクリアできています。
 統計学の理論を体得し、数字も把握できたら、電卓たたきまくってる時間を削り、もっとクリエイティブな時間に活用できる。
 そんなことを考えていると、これからのテクノロジーは、ただの「進化」ではなく、「飛躍的な進化」することが予想されます。
 しかも、世界の50億人がつながっている、ということは、100人に1人の天才が、5000万人もいて、その人たちがつながれるのです。
 どこまで進化するか分かりません。

グローバル化の進展

 「スパゲッティ」に「明太子」を入れたのは日本人ですが、「スパゲティ」に「タバスコ」を入れたのも日本人です。
 東から来たものと、西から来たものが日本で混ざり合うと、美味しい料理ができるのです。

ダイバーシティ(=多様性)はモノカルチャー(=単一文化)を凌駕する。多様な視点を持つ人々のグループと、同じ視点を持った人ばかりが集まったグループが競い合えば、たちまち前者のグループが後者に大きな差をつける。
 これが、テクノロジーの世界になると、
・インドでは、10万ルピー(約2000ドル)という低価格の超小型車「ナノ」を開発
 日本人が車にかけているお金を、インド人は別のものに使えるのか、と思うと羨ましいものです。
・ケニアでは、サファリコムという携帯通信会社が、銀行口座を持たなくても送金できるサービスを開始
 「外国人だと銀行口座を作るのが不便」という問題を、サファリコムは解決したのか、と思うと不便が一つ解決しています。
 単一の視点では思いつかなかったモノやサービスを、多様な視点だと思いつく。
 単一な視点は、多様性な視点をもてる人に、差をつけられていくことになります。

人口構成の変化と長寿化

「Y世代(1980~95年生まれ)の影響力が拡大する」
といわれると
「???」
となってしまいますが、彼らは歴史上で初めて、世界中の人々と結びついた世代。そして、インターネットで調べてしまえば、世界中の情報にアクセスできるのです。
 今までは、管理職や先輩であるというだけで、技術や知識の優位性があったかもしれません。
 しかし、その優位性がなくなると考えると、管理職や先輩もおちおちしていられません。

 話が変わって、ぼくの体験ですが、定年退職した方がシルバー人材センターに登録して働きに来てくれたのですが、すごい知識を持っていらっしゃる方でした。
 本人からもいろいろご教授いただいたのですが、他の有能な先輩も紹介してくれるので、勉強になりました。

 現代の職業生活に起きた最も重要な変化はなにかという問いに対して、経営思想家の故ピーター・ドラッカーが挙げた答えは、テクノロジーの進化でもなければ、グローバル化の進展でもなく、平均余命の目覚ましい上昇だった。ドラッカーは、長寿化を二一世紀の奇跡と位置づけていた。
 これからは、「ただの」管理職や「ただの」先輩では、優位性はなくなってしまいます。
 世界中の誰か、インターネットの向こう側、大先輩がライバルになるのです。

社会の変化

 昔から悪い政治家や経営者はいたものですが、現在の不信感の低下の要因の一つは、「透明性の向上」です。
 悪いことをすれば、ソーシャルメディアで一瞬で駆け巡ってしまうのです。
 ただし、私たちが信頼できるのは、情報を「隠蔽」するのではなく、情報を「開示」して、行動に責任をとってくれる政治家や企業であること、は付け加えておきます。

 また、人びとが、せめて1日1時間テレビを見るの減らし「ソーシャルな」活動に参加してくれれば、クレイ・シャーキーのいう「思考の余剰」を投資できれば、世界全体で1日90億以上の時間が生み出されるといいます。
 大勢の人が結びつき、集積効果を生み出すようになった結果「賢い群衆」が誕生し、優れたアイデアを結集できるようになる。
 非効率で不合理な枠組みは、効率的で合理的な枠組みに、とってかわられるでしょう。

エネルギー・環境問題の深刻化

 石炭系でも石油系でも、いわば貯金したエネルギーを切り崩しているのが現代文明です。
 今のままではいずれ資源の底が見え、エネルギー価格が高騰することが想定されます。
 持続可能性を重んじる風潮は―――――もうすでにできています。

3つのシフトチェンジ

【第1のシフト】ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ

 今までの雇用形態だと、終身雇用とゼネラリストはセットになった契約でした。
 これからは広く浅い知識・技能しかもっていない労働者は、ITや機械にとってかわられてしまいます。
 需要のある価値を生み出し、希少性があり、模倣されにくい、専門技能を持ったスペシャリストになることが求められます。
 しかし、その専門技能も一つだけではリスクがあります。いつ何にとってかわられるか分からないからです。
 なので、複数の専門技能を連続して習得することが好ましくなります。
 何を習得すればいいのかは、未来の予測を完全にできない以上、分かりません。
 しかも、専門技能を習得するには、努力と時間が必要です。
 自分が、「やりがい」があって、「満足のいく経験」だと、感じられるもの。
 後悔しないためにも、「好きな仕事」を選ぶことです。
 四角大輔さんは、「好きなもの」と「得意なもの」の組み合わせることで、自動的に集中できる「最強モーター」が働くと言っています。
 考えてみれば、グローバル化でいろいろな人とつながれるのです。役割分担をして、「最強モーター」が働く分野で協力し合えば、いいのです。

【第2のシフト】孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ

 塩野七生さんは著作の中で、
「ある事業が成功するかどうかは、参加者全員が利益を感じているかどうかに成否がある」
と言われています。
「損をした!」
「貧乏くじつかまさせられた!」
と思わせるような人間と、誰も付き合いたくはありません。
 信頼と互恵関係を育むことが、これからはますます重要になるでしょう。
 そのためには、
・頼りになる同志を募ること
・大規模で緩やかな人的ネットワークを持っていること
・親密で前向きな交友関係を築くこと
が重要になります。

【第3のシフト】大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ

 今までの時代は、身にまとう服や装飾品、所有する車や住居、会社の肩書などなどが、社会的身分を表すシンボルになっていました。
 そうなると、勢い消費が増えるので、所得を増やさざるを得ず、結果、仕事一色の人生にならざるを得ませんでした。
 仕事と私生活のバランスをとることが指摘されて、ずいぶん経ちます。
 漫然と過ごしていては、どこに流されるかしれたものではありません。
 仮に、仕事一色だったとして、広く浅い知識や技能しか持たないゼネラリストは淘汰されることが予想されます。
 そこで、仕事のキャリアも、仕事そのものも、私生活も、何かを諦め、そして何かを手に入れる。
 「選択」と「集中」がこれまで以上に求められることにまります。
・やりがいと情熱を感じられ、前向きで充実した経験を味わえる職業へ
・お金と消費ではなく、経験
が、キーワードになります。

変化に目を閉ざすのは「無謀」で「危険」

 「気づかないうちに積み重なる既成事実」が環境破壊による文明破壊をもたらす(『文明崩壊』)とジャレド・ダイアモンドさんの指摘があったが、それが僕たちの身にも起きている。

あまりの熱さにカエルはすぐ鍋の外に飛び出す。では、カエルを冷たい水の入った鍋に入れて、ゆっくり加熱していくと、どうなるか。カエルはお湯の熱さに慣れて、逃げようとしない。しかし、しまいには生きたままゆで上がって死ぬ。鍋の中のカエルと同じように、私たちは仕事の世界で「気づかないうちに積み重なる既成事実」に慣らされてはいないか。
 僕たちも「ゆでガエル」にならないように対策を練らないと、「人生崩壊」を迎えてしまう。
 そうならないように、対策を練るためには?

  • あらゆるものが変わるわけではない。変わらないものがあるが、変わるものもある。それを見極めること。
  • 未来の予想図を描くのを、いっさい放棄するのは見当違い。場当たり的な対応に終始してしまうからだ。
  • 不確実性がある以上、いくつかのシナリオを描き、柔軟に計画を立てること。
  • さまざまな状況に耐えられる強力なアイデアを追求すること。
  • 不確実性を前提に、戦略を立てること。
  • 予測の正確性を磨くことも怠らないこと。

 未来の予想図を完璧に描くのは不可能。
 だからと言って、漫然と生きていては、どこに流されるかしれたものではなく、ゆでガエルさながらに、人生崩壊してしまいます。
 しかし、信念に従って行動すれば、未来は選ぶことはできる。
 5つの変化の念頭におき、3つのワークシフトを選び、後悔しない人生を送りましょう。

まとめ

  • 変化に目を閉ざすのは「無謀」で「危険」
     なので、5つの変化の念頭におき、3つのワークシフトを選び、後悔しない人生を送りましょう。
  • 変化の5つの要因
    • テクノロジーの進化
    • グローバル化の進展
    • 人口構成の変化と長寿化
    • 社会の変化
    • エネルギー・環境問題の深刻化
  • 3つのシフトチェンジ
    • 【第1のシフト】ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ
    • 【第2のシフト】孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ
    • 【第3のシフト】大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ