【読書】『海東青 摂政王ドルゴン』
明末清初の中国が舞台。主人公は清のドルゴン。
明の時代、現在の中国・満州地方は女真族が数多くの部族に分かれて抗争を繰り返していましたが、ヌルハチという英雄の下、統一に成功。
したものの、英雄が没したら、内紛が発生するのはつきもの。
後継者争いを防ぐために、ひいては女真族のために。ヌルハチの後継者をホンタイジと定めるために、ドルゴンの母親は殺されてしまいます。
今日という日だけは、運命を拒絶するだけの力が欲しかった。母を―――大妃・アバイを運命から救い出す力が。十五歳の少年が政治的駆け引きができるわけでもなく、権力に逆らう術もなく。しかし、だからといって政治が分からないほど愚かではなく、むしろわかってしまうほど聡明なのがドルゴンの苦悩。
「野心などない。権力や富にも、興味はない。ただ、自分の思ったように生きられるだけの、力が欲しい。それだけだ」自由を手に入れるというのは、難しいものだ。それが高貴な生まれであったり、権力に近いところにいたりすると余計に。
そして、結果、ドルゴンは清による中華統一を成し遂げることに成功。
したんだけど・・・・・
(ふたたび、あれほど切実に、力が欲しいと思う時がくるのだろうか)権力者や成功者のほうが自由に生きるのは難しくなるようだ。
その時が来なければ、権力などあってもうるさいだけだと、ドルゴンは思う。強大な力には、それだけの義務や強制がつきまとう。力を手にすればするほど、できることが少なくなる皮肉を、ドルゴンはよく知っていた。