【読書】『5時に帰るドイツ人、5時から頑張る日本人』

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 なぜ、日本の働き方改革は上手くいかないのか?
 この本を読むと、「国民性です」という答えが出せます。
 「働き方改革がうんたらかんたら・・・・・」と考えながら読むのはやめました。
 「ドイツ人てそんなことやってんのか!」という比較文明論の方向で読み進めると、日本とドイツの国民性の違いが見えて、興味深いです。
 どっちの国が暮らしやすいかというのは人それぞれですが、そういったことを比較して、学べるところ学び、微妙なところは遠慮していく、というのが賢い選択かなあ。

1日10時間を超える労働は禁止

 これは重要です。ドイツでは、1日10時間までしか働けないし、働かせてもいけないのです
「やべー、仕事終わらねー。残業だー」
というのがドイツでは通用しません。
「てめー、もう帰んのかよ。残業してけ」
というのもドイツでは通用しません。
 月平均という指標ではなく、単純に1日10時間を超えてはならないのです。
「仕事が終わらなかったらどうするか?」
ではなく
「10時間で終わらせるように工夫する」
というように考え方を変えなければなりません。
 時間通りに仕事を終わらせなくてはならないという心理的なプレッシャーはあるでしょう。
 でも、「10時間以上働かなくていい」というのは、心身ともに健康にはいいことだ。

罰金は上司のポケットマネー

 組織的に1日10時間を超えて働かせていることが判明した場合、事業所監督局から最高1万5000ユーロ(1ユーロ120円で計算すると180万円)の罰金を科されてしまいます。
 しかも、会社ではなく管理職個人が払わせられることもあるもあるのです
 「仕事多いから残業してけ」と部下に残業させたら、ポケットマネーで180万払わさせられるハメに。
 しかも、抜き打ち検査で長時間労働を摘発されたり、匿名通報制度があったりしますし、労働組合の力まで強い。
 うーん。ドイツで働いたら、出世しないな。別に、残業したいわけでも、させたいわけでもないけど。
 出世しなくても、起業して経営者になったとして、長時間労働が摘発されたら、罰金だけでなく前科者にもなってしまう。
 さらに、ブラック企業としてメディアに報じられてしまったら、求人出しても人が集まらないなんてことに。
 スキルを持った人々にとって現在のドイツは、他にいくらでも就職先がある“売り手市場”なのです。なので、わざわざ労働条件が悪いブラック企業で働こうと思わないからです。

 管理職や経営者のリスクがありますが、労働者にもリスクがあります。
 ドイツでは、病欠に6週間まで給料が払われるます。もちろん病欠する場合、医師の診断書(証明書)を会社に提出しなければならないのですが。
 「仮病を使ってずる休みする奴、いそうだよね?」と思うかもしれません。しかし、現実にはずる休みする人はいないそうです。
 もし、「仮病」であることがバレたら。クビです。
 ドイツでは労働者に様々な権利を与えていますが、だからと言って権利の乱用まで許していません。ルールを破ったら情け容赦なく制裁の鉄槌を振り下ろす。これがモラルハザードの抑止力になっています。
 労働者も、管理職も、経営者も、ルールを守れ。そこは厳しくチェックされます。しかし、ルールさえ守れば、権利が認められるということが機能している社会なのです。

仕事は人につくのではなく、会社につく

 「なんでそんなに休めるのかな?」というと、「仕事が人につくのではなく、会社についているから」です。
 もっとも、ドイツでは社内外の雇用の流動性が高いから、業務の担当者が頻繁に変わる、という事情もあるそうです。
 しかし、ドイツの商習慣では、誰が担当者であるかではなく、会社がきちんと対応してくれることを重視。
 「担当者出せ!」「責任者出せ!」とかって怒鳴ってくるような社会ではないんですね。
 ドイツの顧客にとって本当に重要なのは、その企業からきちんとした対応をしてもらうことであり、特定の社員でなければならないという認識はほとんどないのです。
 たしかに、そうでもないと、2週間も休むなんてことはできないでしょうね。

ドイツはサービス砂漠だ

 私も1990年にドイツに移住してまもなくの頃には、ショックを受けた。しかし、それから27年経った今では、「ドイツは、良質なサービスは滅多にない“サービス砂漠”だ」と割り切っているので、接客態度の悪さに腹を立てることもない。

 サービス砂漠(笑)
 熊谷徹さんは、ミュンヘンのレストランでウエイトレスから「空いた皿を手渡してくれ」といわれたことがあるそうです。日本の1万円札に相当する紙幣を使おうとすると「高額紙幣を使うな」と叱られたことがあるそうです。
 こんな事日本でやったら、たぶん僕は雇止めになると思いますが、ドイツではサービスは無料ではなく、サービスの対価としてチップを払うのです。ドイツ人はサービスを期待していないのです。
 10時間で帰らなければならない。僕もそうだけど、この人もそうなんだろうな、という社会的合意が成立しているのでしょう。だから、サービス砂漠でも許されるのでしょう。それがいいか悪いかはさておき。
 こういうことは企業間取引(BtoB)にもいえることで、「この仕事を受注したら、社員が10時間以上働いてしまう」ということになったら、断ってしまうそうです。
 ドイツ語で中小企業を意味するのは「ミッテルシュタント」ですが、名前を知られていなくても、特殊な機械や部品などのニッチな市場で50%以上のシェアを持っています。
 ミッテルシュタントは「他社が真似できない製品」を提供する差別化戦略で、低価格競争に巻き込まれず、利益率の高い製品に特化しています。
 付加価値が高い製品に特化しないと生き残れない―――――シビアな世界だと思いますが、10時間以上働けないのであれば、薄利多売という物量をこなす経営はできない。結果として利益率の高い経営をするしかなのです。

まとめ:ドイツと日本のちがい

  • 1日10時間を超えて働いてはいけない。
  • それがバレたら、罰金はポケットマネー。
  • 労働者の権利が保障されているが、権利の乱用は許されていない。
  • 仕事は、個人(担当者)ではなく、会社につく。
  • サービス砂漠だ。