【読書】『小説 イタリア・ルネサンス4―再び、ヴェネツィア―』
ルネサンス期のイタリア・ヴェネツィアが舞台。
主人公マルコ・ダンドロは、公職追放の機会を利用して、フィレンツェとローマの旅に出る。そして、公職復帰。
復帰後、マルコの提案する。
これからのヴェネツィアは、勝つことはできなくても負けないことはできる、を目指すしかありません。その手段の一つが、可能なかぎり中立を保持し、可能なかぎり戦争に訴えないことです。この政策は、英雄的解決を望む人たちからの批判にさらされることになります。
当時のヴェネツィアの問題をまとめると、
・トルコの勢力拡大にヴェネツィア一国では対抗できないこと
・スペインは信用できないこと
・フランスは役に立たないこと
・法王庁は求心力を失っていること
キプロス産の葡萄酒が飲みたかったからではないのだが、セリムはキプロス攻略を決める。1571年のファマゴスタ陥落で完了。
1571年10月7日のレパントの海戦で、キリスト教連合艦隊が勝利したものの、1572年の連合艦隊は無為に終わる。
ヴェネツィア本国の「十人委員会」でも、マルコ・ダンドロの考えが多数派にもどっていた。それもわずか、一年後の変化である。
その三十七名全員が、もはやスペインは頼るに値いせず、で一致したのだ。トルコとの間に単独講和を結ぶのに、賛成したのである。同じキリスト教徒でも、スペインは信用できない―――――不実な味方は敵より恐ろしい。
「だからといって、他に方策があったと言うのかね」というのは引退後。
だが、彼らもヴェネツィア人。相手との非難の応酬に時間を費やすよりも、どうすれば現状を打開できるかを考える、ヴェネツィアのエリートたちであった。キリスト連合艦隊が役に立たないからと言ってみたところで、現状は打開できない。
「どうすればいいのか?」と言われたら、結局、トルコと講和するしかなかったのです。
マルコは、トルコとの講和締結発表後、元老院議員で提言する。
・危機と蘇生は背中合わせであること
・蘇生の仕方は、危機の性質や時代によって変えること
・これからのヴェネツィアは、長期的な利益の維持を最重要時として考えること
嘆いていても問題は解決しない。
それに、危機はいつかはやってくる。乗り越えなければ滅んでしまうのだから、蘇生するしかない。
そのためには、目標を設定し、打てる手を打ち続けるしかないのです。